第28話

強くなりたい。


心も強くなって自分の好きなものを貫いてさ、みせたい景色があるんだ。


その夢に向かっていけるなら、愛だの恋だのと言ってる暇なんてないよ。



部室に戻ったら香水の匂いが消えていた。



「あれ?帰ったの?」


「おう、帰した。ちょっと集中したかったし」


「そう」


聞いた途端ホッとした。

なんだか断然やる気も湧いてくる。


「賢人さ、ここの部分――こう変えない?」


「ああ?ダッセーべよ、絶対こっちのがカッコいいって」


「ええ~そうかなー?穂谷もそう思う?」


「ん~~…どっちもダサいな」


「ぶっはは!」


「笑うな、悟!」



さっきは言えないことも思い切り言い合える。


私たちの中には、愛や恋なんてものより遥かに孤高な揺るぎない友情がある。


そう信じていた。

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