第27話
休憩時間になって、水がきれてしまった私は、部室を出て販売機へと向かった。
おまけのようについてくる悟。
それだけで彼女たちに笑われたような気になってしまうのは勘違いだろうか?
私はいいけどさ、悟まで馬鹿にしないでほしい。
「わざわざついてこなくてもいいのに」
「別に、コーヒー飲みたいだけだもん。それによ、あそこにお前がいなかったら地獄じゃん。俺一人で何すれってゆうのよ」
「アハハ!確かに!ポツーンだよね」
「だべ?」
無駄に大きい校舎を歩いて、遠いところの自販で水を買った。
「少しここで(中庭)休んでくべ。あっこに居たら香水臭くて酔うわ」
「確かに。あれは殺人級だね。騒音問題で窓開けられないし」
12月に入って、草が凍るくらい寒いけど、あの香水まみれの空間に帰るのだったら、ここの中庭で新鮮な空気をいっぱい吸いたかった。
「一本、やる」
二本呑むんだと思ってたのに、私に一本よこしてきた。
「ええ?ありがとう。わーめっちゃ温かいし」
冷たい水で水分を補給して、手先をホット缶で温める。
矛盾してるけど、最高に合理的だ。
悟は私を見て何となく微笑んでいた。
「例えばさ・・・・」
「ん?」
なに?急に。
遠い目をして語りモードに入った?
「三波はドラムのことで頭がいっぱいだと思うけど、彼女らみたいに男に愛されるとか、興味ないの?」
「愛される・・・ねえ」
「かわいーって言われたいとか、ナデナデされたいとか。そういう一般女子的な考え―――」
「ないね」
「―――ふっ、そうか」
「全然ない。微塵もない」
「あはは、そうかい。わかったって」
「だってさ、」
「ん?だって?」
「だって…人に愛されたら、弱くなるじゃん。弱くなりたくないよ、私。強くありたいもん」
愛されて弱くなって
盲目になりたくない
ドラムより、大事な事を見つけたくない。
私は、私の人生は、太鼓さえ叩ければ、それで満足なんだよ。
それ以上のものは要らない。
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