第24話

「ちょっと、フレミングさん、来てくれる?」



げげー…また呼び出しだ。


今度は何ですかね?賢人様の彼女様。


ちなみにバレンタインってイベントの日にライブがあるのは私のせいではないですよ?



「ねえ、どういう事?2月13日さ、予定あったんだけど?」


「・・・は?」13日?・・・なに?空いてるじゃん、ライブ14日だったし。


「?付けてないで答えてよ」


「ライブって14日ですよ?13日予定あっても問題ないと思いますけど」



その日は金曜日で、放課後少し練習するだろうけど、夜までやらないはず。


なんで私が責められるの?



「だっからさ、13日の夕方に札幌ここ出て、前のりしてホテルデートの予定だったのに」


「それと、何が関係が?」


「あんたの兄弟が乗せてくとか言うから、ナシになったじゃん。どうしてくれんのさ。こっちは必至こいて働いたバイト代使ってホテルおさえてんのに」


「いやあ、そう言われても…」



それ、私のせいなの?そもそもあなたの彼氏がいけないんじゃないの?


ギターとかエフェクターケースだけ預かるからさ、前のりしていいのに。

そうしないのは彼氏の判断でしょうが。


ってかさ、彼女がお金だしてホテルおさえるとかさ…―――賢人クズじゃん。


それか、あなたが無理やり予定をねじ込んだか。


彼氏の趣味に理解があるフリするからそうなるんじゃないの?


どちらにせよ、私とお兄ちゃんのせいではない。



「私の兄のおかげて行きかえりの交通費が浮くんですよ?感謝されても恨まれる筋合いはありません。前のりするかどうかは、恋人同士の問題であって、私は干渉できませんから、きちんと話し合って下さい。予定通り前のりの際は、機材を預かりますから。———では」



お兄ちゃんだって中堅どころで仕事が忙しいのに、休みを削って来てくれるっていうのにさ、バカバカしい。


わたしに何か言ったら変わるとでも思ってるの?頭ワル。


出番なんてすぐ終わるんだし、楽しもうと思えばデートっぽいことも出来るでしょうが。



それにさ、彼氏が好きだったら、輝ける場所を奪ってやんないで、健気に尽くせばいいのに。



「ふっざけんなよ!」



言葉と一緒に繰り出される蹴り。


「何すんのよ!」

人睨みしたら、もう一発きそうだった足が止まる。二発目は辞めにしたようだ。


一人だし、反撃されると思ったのかそのままそそくさと去っていく。


蹴られた足をパンパンとはらった。


はっきり言ってそんな華奢な蹴りじゃ痛くないわ。こっちは毎日鍛えてるし。


あれじゃ、ペダル踏んでもバスドラの音が響かないだろうな。

そのくらい力がなかった。

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