第20話
夜の八時。
おばあちゃんのご飯をバクバクと食べる海生兄。
その食べ方が学校にいる同級生のようで少しおかしい。
「何笑ってんの。悪ガキが」
「だって、いつまで経っても変わらないなって思ったんだもん」
「そんだけ、ばあちゃんのご飯が旨いの。おかわり」
鬼畜にもばあちゃんにお茶碗を差し出すから、私が代わりにそれを受け取った。
「———ミヲちゃんは、いい子いないのかね」
「ん~~~…ズズ―…」
あ、みそ汁を啜るふりして誤魔化してる。
「リヲ君も渚沙ちゃんも結婚して子供生まれたのに、お兄ちゃんがね~~」
おばあちゃんの呟きはいつもの事。でも、ミヲ兄はいつものように適当にはぐらかす。
この年になるとなかなか年が近い人間が見つからないとか、そもそも出会いがないんだとか。
そんなのはお父さん譲りの落ち着いた色のブロンド髪や、母さんを基調としたイケメンフェイスで楽々カヴァーできそうなものなのに。
「要は結婚に興味がないんでしょ?」
「・・・・・」
二階の部屋に上がった私は、黙々と布団を敷くお兄ちゃんに話しかける。
「そんなことない」
「じゃあなんでしないの?」
「結婚するしないは運のめぐりあわせだろ?そういう機会に巡り合わなかったし、結婚したいってお互いに思える人にも出会ってないだけ。深読みすんなよ、ガキが」
ムっ、そのガキとさっきはギャーギャー騒いでいたくせに。
「お前もさっさと部屋に戻って寝れば」
「え~まだ十時だよ?」
「じゃあ勉強しろ、俺は疲れたから寝る」
「な~んだもう寝ちゃうの?つまんないの」
ぐちぐちと怒るお兄ちゃんだけどさ、来てくれたらそれなりに嬉しい。
他の兄弟は、子供やパートナーがいるからなかなかゆっくりと話せないしね。
あ、美湖は論外。私の発言は許されず、ず―――――っと聞き手にまわらなくちゃいけない。
ついでにあちこちに連れまわされる刑に処される。
そんなこともあって、このお兄ちゃんが一番話しやすい兄弟でもあるんだ。
私が生まれた時はイギリスに留学してたし、大学も日本じゃなかったからあまり面識なかったけど、小学校に入るぐらいからちょくちょく顔を出してくれるようになったんだ。
日本有数な有名銀行にお勤めになってるミヲ兄さまは、私の自慢のお兄様でもあった。
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