第12話

何に腹を立てているのかさっぱり分からん。


終いには今日の練習も中止になってしまった。



「————俺も帰るわ」


三人だけでもスタジオ入ろうって言ってたのに、ギタリストは辞退していった。


「「・・・・・・どうする?」」

またハモった。ベーシストとドラマーはこんなところでも息が合うみたいだ。



「変態的なセッションするか」


「だよねー、このまま帰るのは悔しいよね」


悟もベース大好き人間。日夜ベースを抱えて生きている。


目標は頭で考えたイメージを瞬時に形にすることなのだそう。


「三波は出来てるよな」


「まっさか、できてないよ。葛藤だらけですから」


「でも、小さい時からやってんでしょ?凄いよな。俺なんか鼻垂らして走りまわってるだけだったわ」


「いいな~楽しそうじゃん、それ」


「いいか?俺はそう思わないけど。無駄な時間だったなって後悔してる」



悟はそんなこと言うけど、私には羨まし限りだ。


私は同世代の子たちと遊んだ記憶があまりない。



人格を形成していく過程で、それがどんなに大事かを海生様に散々言われてきたけど、無理でした。

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