第9話

「お父さん元気?まだやってんの?美優みゆねえとか、潤のジジも」


「うん、相変わらずのスタイルでしてますよ。地元フェスや隣町とか。小樽にも未だに行ってます」


「そっかー、なんかそういうの聞けば負けてらんねーなって思えるわ」


亨兄ちゃんの規模に比べればなんてことないのに、今でもそう思ってくれるのが嬉しかった。


「みなも、早くこっち来いよ?待ってるからな?」


「うん、いま出来る事、精いっぱいやってるよ」


「ああ~今の発言ミヲが聞いたら激おこだな」


「いま出来る事の中には”勉強”も入ってるから!チクんないでよっっ」


「わかったわかった、今日はとにかく楽しんできな?お友達たちもね」


「「「はーい」」」「はい!!」

・・・・一人だけ、声でかいし。



それから予定通りステージ袖から見せてもらった。


もちろん、私のバンドメンバーもパスをもらって通してもらう。


「わ、すっげ、すっげ」しか言わない賢人にみんなが笑った。




ステージを見上げてみるのもいいけど、このアーティスト目線で会場全体を見るのも格別にいい。


わたしにはまだ見たことない景色。


人々が熱狂して全体がひとつの塊になったようにうごめく。


亨にいが煽ってダイブやモッシュをする観客たち


ステージに立ってる側と見てる側。


どちらも同じようにカッコよかった。




そのことに興奮する賢人。


「あんな群衆俺も動かしてみて―な」


打ち上げ会場にまで呼んでくれた亨にいを遠くから眺めながら何度も呟いていた。



本当に好きなんだな、凄く澄んだ目をしてる。


学校で悪ぶったように振舞っている態度と全然違うし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る