第6話

練習相手には困ることはなかった。


わたしの地元には代々受け継がれている練習小屋がある。



年が離れた高校生と、幼稚園児がバンドを組むって異様さは話題になり、地元新聞にも取り上げられるほどだった。


そんな状態で小学校に入る私は、あらたな出会いに期待を膨らませたけど、まわりがとても子供っぽくみえてしまう。



多分年上の人ばかりと触れ合ってたからだとおもう。


どうでもいいことで大笑いしたり、少しだけ他と違うからっていじめの対象にしてからかったり。


そんなのが本当にウザかった。







「これ、こうゆうのだよ」



次の日、私の言いつけ通りにお手本になるような曲を聞かせるためにイヤホンを一つ差し出してくる賢人。


線が繋がったタイプのそれを片方を受け取り、耳に嵌めて聞いてみる。



う――ん・・・・これは、自分の発想では思いつかないな…。

こういう打法も世の中にはあるのか・・・


これをそのまま叩くことは難しいことではない。


難しいのは新しいものを作る想像力だ。


ここ、凄いねって言えば”え?簡単っすよ”って言っちゃう人よくいるけど、そういう事ではないんだよ。


それに思いつくことが凄いなってことなのにね。



そんなに好きなジャンルではないけど、どんなことでも人生は勉強の連続。


この知識だって無駄になることはない。


自分の世界にだけ籠っていたらこんな新しい発見なんてない。



「かっこよくねここ、聞いてっか?」


「————はいはい、理解した」


「ホントかよ、ちゃんと最後まで聞けって~」


私は視界の端にみえる怨念が籠ってそうな目線を見つけてもういいって言ってるのに、それに気づいてない賢人は肩を抱き、なおも聞かせようとする。



ちょ、もう勘弁して・・・あんたの彼女がみてるんだよ。


呪われそうなくらい怖い顔で。

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