第4話

「ただいまー」


「お帰り、手を洗ってー。夕飯食べましょ?」


「うん、おばあちゃん。今日のおかずなあに?」



「鳥手羽の甘辛煮とお煮しめよ」


「やったー!おばあちゃん大好き!ありがとう」


親元を離れておばあちゃんと暮らしている私。


地元がある道東地方が嫌いなわけじゃないけど、気軽にライブを見に行ける札幌に住みたかった。


有名なバンドほど、北海道にきても札幌しかやってくれないから、いっそのことこっちに住みたいって思ってたんだ。


それに、地元よりバンド活動がしやすくて、ライブハウスも有名どころからアンダーグラウンドまで揃ってる。






なんて言ったら動機が不純すぎてお兄ちゃんに叱られるから言えはしないけど。


表向きは、きちんと将来を見据えて勉強したいからって事になっている。



その嘘をつきとおす為、勉強を本気で頑張った。



頑張った結果、コッチの高校に受験することを許してくれた両親と兄様。


でも、一人暮らしは許してもらえず、おばあちゃんが住む戸建に一緒に住んでいる。



「わ~おいしそう!いっただっきまーす!」


「はあいはあい、沢山食べてね?」


おばあちゃんは終始ニコニコしている。


お爺ちゃんが先立ってしまってから元気がなかったけど、私がこっちの高校に通うため引っ越したいって相談したらとても喜んでくれた。



「あ~おいしい~毎日これでもいいよ、私」


「お父さんもこれ好きよね?三波みなちゃんはお父さんに似たのね~」


「そうかな?」


「うんうん、そっくりよ」



おばあちゃんはそう言ってくれるけど、正直そう思ったことはない。


真っ黒な髪色は私だけだし、男も惑わす不滅のイケメンと言われてきたお父さんの面影なんか私に一つもないよ。


お母さんの雰囲気が少しあるって言われるけど、お母さんみたいに愛らしくもクールな感じには程遠く、本当に目が細くクールっていうか冷たい印象だけしかない。


どう考えたって私だけ別の子なんじゃないかって思ってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る