パッとしないプレイスタイル

第3話

「おまえのドラムってさ、飯はいいんだけど”オカズ”がぱっとしねーよな」



こんな事を言ってくるのは同じ高校でクラスメイトの賢人。




「じゃあ、どういうのがいいのかオカズ考えてきてよ」


「俺ドラム叩けねーし」


「じゃあ、こういう感じとかっていう見本みたいなの持ってきて、参考にするから」


「えー、めんどくせ」



始まった


”めんどくせ”


いいものを作っていこうと思っても、この”めんどくせ”にメンタルやられる。



曲を作ってくるのはいいんだけど、パートごとの当て振りは丸投げ。


のくせに、なんか(理想と?)違うって文句つけてくるギターボーカルの賢人。



こっちは好きでもないジャンルにつき合ってやってんだからさ、文句いうなよな。



そういうところが、”目立ちたい”だけだろって思っちゃう。



でも今のところ私が人前に出て叩けるのは、こいつのおかげだったりするから強く文句は言えない。




人見知りな私は、誰かに誘われないとメンバーを見つけることができないくらい小心者。



そんな小心者がどうしてステージに上がれるんだって?



はい、こたえは簡単です。


わたしは完全たる”脇役”にすぎないからです。


みんなが注目するのはフロント三人だけ。



B(ベース)、RG(リードギター)、G・Vo(ギターボーカル)の三人が主役であって、そんな三人がわちゃわちゃとステージでパフォーマンスして輝くほど、その陰の存在になれるからです。



決して私に注目が集まる訳でもないし、どうかすればスポットライトさえ当たらない。



でも、ただバンドがしたいだけの私にとってそんな黒子的存在がありがたい。



注目はされたくないけど、人前でドラムが叩きたい。



賢人やバンドメンバーと居れば、そんな分かりづらい願望をかなえてくれる。


このバンドに居る理由はそれだけ。


自分が好きなことをできる居場所作りの為でもあった。

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