第2話

「このユニフォームを着るのも、今日が最後なんだよな」



みんなで着替えている時、雅志がぼそっと言葉を漏らした。


その言葉に、それぞれが自分のユニフォームに目を落とす。



俺は5年の二学期からだから、皆よりは愛着が少ないのかもしれないけど。


それでも、いろいろな思い出が詰まってる。



「中学のユニフォームって、どんなんだろうな」



公輝が隣にいた栄司に声を掛けると、アイツは少し浮かない顔をしていて。


何だか、返事に困っているようだった。



「どうしたんだよ、栄司。何か暗いけど?」



ユニフォームから私服へと着替えながら、春也がそう尋ね。


その問いに、栄司は躊躇いながらも口を開いた。



「俺…中学は野球やらないから」



「えっ?」



「何でっ?」



皆から次々に驚きの声が漏れる。


実際俺も、予想外の事に驚いていた。



「実はさ、肘…壊してるんだよ。野球肘ってやつ」



そう言って栄司は、左手で右の肘に触れた。



野球肘。


少年野球をやってる奴に多い、肘の病気。



過度に肘の靭帯を曲げ伸ばしする事や、投げ方が悪かったりする事からくる肘の痛みだ。


それを栄司がやってただなんて……。

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