3月9日

第1話

「今日で、6年生は最後の練習になる。みんな、中学に行っても野球を頑張って続けてくれよ」



「はいっ!」



監督の言葉に、俺達6年は大きな声で答えた。



野球部最後の練習は、運良く快晴の元で行われている。


明日から練習が無いかと思うと、かなり淋しさが募ってくる。



「俺達は県大会までしかいけなかったけど、お前らは頑張って全国大会に行けよ」



キャプテンの公輝の言葉に、4年と5年が大きな声で答え。


俺達部員1人1人に、下級生から寄せ書きの色紙が渡された。



“神崎君へ”と書かれたその色紙には、たくさんの下級生達からの嬉しい言葉が載っていて。


正直、嬉しかった。



「お前の見せてよっ。何々?“神崎君のプレーが好きです”?“神崎君みたいに上手くなれるように頑張ります”?ちぇっ、大翔はいいよなぁ」



そう言って拗ねるように頬を膨らませる克也は、俺に自分の色紙を押し付けてきた。



“吉野君へ”と書かれた色紙を見ると、大概こうやって書かれていた。



“いつも笑わせてくれてありがとうございます”


“吉野君がいてくれたから、部活が楽しかったです”



「プレーの事なんて、一切触れてないんだぜ?」



「皆、お前の人柄が好きって事だろ」



笑っちゃいけないと思いつつ、つい顔がほころんでしまう。


「克也らしい」なんて言ったら、こいつはまた拗ねてしまうんだろうな…きっと。

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