第4話
「どんな人?何年生?」
私は正直あまり興味が無かったけれど、佳音が楽しそうに話しているので微笑みながらそう質問した。
「川村修二先輩。3年生だよ!総合コースに入ってるみたい!」
この前はじめて先輩を見つけたばかりと話している割に佳音は修二先輩について詳しく知っているようだった。
「すっごく背が高くてオーラがあるから見ればすぐに分かるかも!ちょっと怖そうだから近寄り難いんだけどね…。でもとにかく格好良いんだぁ」
佳音が楽しそうにそう話しながら辺りを見渡した。
「あ、超タイムリー!」
佳音はそう言って食堂の入り口の方を指差した。
こんなに人が多い中で、佳音が誰の事を言っているのかすぐに分かった。
黒髪で高身長の先輩は、1人で気だるそうに歩いていた。確かに佳音の言う通り周りに埋もれないオーラがあった。
「ね?格好良いでしょ?」
佳音は修二先輩から目を離し私に輝かせた目を向けて共感を求めた。
「うん、確かに格好良いね。すぐに分かったもん」
私はそう頷いた。
学食の列に向かう修二先輩に
「よう、修二」
と先輩と同学年と思われる金髪の派手な男の人が先輩の肩を叩き、一緒に歩きだした。
私達の座る席を通り過ぎる2人を見て佳音は
「そら、先輩をこんなに近くで見れて私今日ラッキーかも!」
と興奮気味に話した。
私が佳音の言葉に笑っていると、一瞬修二先輩が私達の方に振り向いた。
不覚にも胸がドキッと高鳴った。
先輩と目が合った気がしたのだ。
それが気のせいなのか本当に目が合っていたのかなんて確かめることもできないけれど、確かに先輩は私達の方に振り返ったのだ。
整った細い眉と筋の通った鼻、切れ長の目元、真正面から見ると尚更完璧な造形の顔だと思った。
先輩がこちらに振り返ったのはほんの一瞬の間だけで、すぐに前に向き直しそのままスタスタと歩いて行った。
「ねえ、今絶対目合ったよね?」
佳音はますます興奮気味になって私を見つめた。
「ど、どうかなあ?」
私は少し戸惑いながら首を傾げた。
昼休みが終わって教室に戻る間も佳音はずっと先輩の話をしていた。
佳音は先輩に恋をしているわけではなく、好きな俳優を見ている感覚に近いと話していた。
今日のような出来事は芸能人を近くで見れたような嬉しさなのだという。
先輩が歩いている時、確かに周りの女子生徒は佳音と同じように先輩を凝視していたので、先輩に恋愛感情を持つ人や、憧れを持つ人も多いのだろうと察した。
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