第3話
私の通う私立桜田高校は特進コース、進学コース、総合コースと分かれており校舎も違う。私は平均的な偏差値の進学コースに入っていた。
つまり私はごく普通の女子高生だ。あるいはそう見えるようにある程度の努力をしてきた。
特別秀でた才能はないけれど、大きく遅れを取るようなこともないそんな平均的な生徒のうちの1人という訳だ。
「お腹すいちゃって途中から授業の内容が全然頭にはいらなかったよ」
隣でそう笑いながらお腹を抱えるのは同じコースで同じクラスの一ノ瀬
「私もお腹すいて時計ばっかり見ちゃった」
私はそう言って佳音に笑いかける。
席が前後ということもあり、入学してすぐに話しかけてくれた明るくてお洒落な彼女とは入学当初から毎日一緒にいた。
私は大体の人とある程度は上手くやっていける性格だと思っている。勿論気の合う人と合わない人はいる。ただそれとは関係なく、荒波を立てることなく上部だけでも仲良くすることができる。
所謂八方美人なのだ。
逆を言えば私は1人の人と特別仲良くするのが苦手だった。
どこまで相手に踏み込んでいいのか、どこまで自分をさらけ出していいのか分からないから距離感が掴めないのだ。そして1番の理由は何よりも“面倒”だった。
そんな私がたまたま後ろの席の佳音と波長が合い、親友のようにお互いを信頼できているのは不思議な巡り合わせとでも言うのだろう。
コースや学年関係なく多くの学生で賑わうお昼時間の食堂で、私と佳音は空いている席につきお弁当を広げた。
「私この前、超格好いい先輩見つけたんだよね」
佳音はお弁当の卵焼きを箸で掴みながら私にそう言った。
中学に比べて生徒数が何倍も多いため、食堂に行く度に初めて会う先輩や他のコースの生徒に出会う。それは入ったばかりの一年生にとっては心が躍る時間らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます