第5話 一方その頃

私、花守由香は一昨日から今日にかけてのことを振り返っていた。

一昨日、真里と瀬里奈にいい男を紹介してあげると言われた。私は必要ないと言ったがもう話してしまったからとりあえず会ってくれと言われ中庭に行った。すぐ断ろうとしたが相手があまりにも強引で渡瀬くんがいなかったら危なかったかもしれない。

「でも泣いているところを見られちゃったな。」

あれは不覚。高校からはそういった部分は見せないようにしようと思ったのに。

一昨日は何とか大丈夫だったけど昨日も呼ばれてしまった。相手を待たせるのも悪いし、話したらきっと通じると思ったけれどやっぱり駄目だった。でもまた渡瀬くんが助けてくれた。これ以上は頼れないと彼に謝ろうとしたが彼はどこにも行ってくれなかった。むしろ私を助けようと案を考えてくれた。それは話の通じない相手にはそれ以上に話の通じない人になる、というものだった。

「でもあれは流石に恥ずかしかったかな…」

奇声を出すことでなんとか解決する事ができたけど、流石に恥ずかしかった。…今でも恥ずかしい。全身から火が出そうなほど熱い。きっと今の私の顔は真っ赤になっていることだろう。

「それから、私のことを心配してくれて…」

今でも思い出すと顔が熱くなる。これは別に恥ずかしさとかではない。純粋な嬉しさだ。

確かに私は自分のせいだと抱え込んでいたかもしれない。問題を解決できないのは自分が弱いから。真里と瀬里奈は善意でやってくれてるのにそれをしっかり飲み込めてない私が悪い。全部全部全部私が…。と。姿。やっぱり私には無理なのかな…。でもそんな私を悪くないと言って肯定してくれた。彼はお節介だったと後悔していたけれど、彼の言葉は私の心に沁み込んで、きれいにしてくれた。あの時の彼の目は単純に私を心配していて打算や下心などは微塵も感じられなかった。だから私は彼の言葉を真摯に受け止める事ができた。

「渡瀬くん…ありがとう。」

私は彼に精一杯の感謝を込め、呟く。

本当に感謝してもしきれない。今日はいい夢が見れそうだ。そう思いながら私は眠りについた。

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初心ギャル。 @ruice

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