第3話 解決策
「…いい案?」
俺の言葉を聞いた花守が不思議そうにこちらを見つめている。
「そう。いい案。」
「本当にそんな案があるわけ…?」
花守は疑いながら俺のことをジトーっと見ている。ただその目には少し期待も孕んでいて。
「先ず第一に。もしまたあいつにここに呼ばれたら断るつもりはないんだよな?」
「うん…だって待たせちゃうのも悪いし、瀬里奈と真里にもなんか言われちゃうかもだし…」
後者のことはまだ分かるが、待たせるのが悪いってどんだけお人好しなんだこいつは…と思いつつ俺は話を続ける。
「第二に2人に言うのも無理だ。一回言ったが効果はなかったんだよな?」
「うん…やっぱ解決策なんてないんじゃ?」
「いいや、ある。あの男を追い払うたった一つの方法がな。」
まあこの方法を使うにあたって花守のダメージが恐らくでかいが…とそんなことを考えてる俺に気付いていない様子で花守は期待に満ちた目で俺を見ている。
「で?どんな方法なの?それは。」
俺は花守を近くに呼び寄せ耳打ちする。そうすると花守は次第に頬を赤らめていった。
「そんなの無理だよ!!出来るわけないじゃん!」
花守は恥ずかしさを顔いっぱいにだして俺に向かって叫んだ。
「でもこれしかないんだよ。まあまあ絶対上手く行くから俺の言う通りにやってみろって。」
「うぅ…」
花守は最後まで不服そうだったがやはりこの状況を何とかしたいのか渋々受け入れた。
そして次の日の放課後。また花守は中庭に呼ばれ、例の男と対面していた。
「昨日一昨日と邪魔されたが今日こそはしっかりと話させてもらうぜ。由香ちゃん。」
花守はずっと顔を伏せたままだ。やはり怖いか?一応いつでも助けに入れる準備はしているが…。ちなみに俺は最初に花守を見たときのように廊下の窓からこっそりと覗いている。花守はいざ決心したように顔を上げそして–
「キェェェェェェ!」
意味の分からない言葉を叫んだ。男は呆気に取られているがそんなの気にもせず花守は畳み掛ける。
「キェ!キェ!キェェェ!」
「何だよこいつマジでやべえやつじゃねえか!なんでこんなの紹介してきたんだよ真里は!」
男は奇声を発する花守に怯え逃げていった。
俺は男が完全に消えたとこで花守のところへ向かった。
「やるじゃん花守、よかったな!」
俺がそう話しかけると花森は顔を真っ赤にして
「何がやるじゃんよ!こんな恥ずかしい思いするなんて最悪!もうお嫁に行けない…こんな頭おかしい女……。」
と言った。段々声が小さくなり花守は恥ずかしさからか手で顔を覆って座り込んでしまった。
「いやあ、頭のおかしい奴を撃退するためにはそいつより頭がおかしくなればいいって言うからな!まあ、ははっ、あんな、ぷっ…奇声を発するとは思わなかったけど…ぷっ。」
俺は堪えきれず幾分か笑いが溢れてしまった。
「あんたが奇声を発してみたら?って言ったんでしょうが!何笑ってんのよ!もう!」
「ごめんごめん、でも俺は頭がおかしく見せればいいって言ったんだよ?確かに例として奇声を上げたらとは言ったけど、理詰めで話が通じない奴演じたりとか他にもやりようはあったぞ?多分。」
「あ、そういう…」
「まあまあ、でも解決したんだしこれで大丈夫だろ。流石にこれでもう一回来たらこっちがビビる…。ま、そしたらもう一回奇声出せばOK!」
「全然OKじゃない!もう!」
そう花守は怒ってみるもののあまり本気ではないようだ。男の事が解決したのに安堵したのか笑い出した。俺もつられて笑い出し、しばらくの間、中庭には2人の笑い声が広がっていた。
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