第23話

「うん。あ、でも命には別状ないって。右腕か左腕、どっちか折れたんじゃなかったかな?見舞い行くっていったんだけど、来るな、って言われてそのまま放置してる。大人しく入院してるかどうか…」


「確かに。おっさん、タバコ吸いたがってたからなぁ」


滋と祐さんは顔を見合わせて頷いている。美夜は首を傾げて、


「心配だよね。後でお見舞い行こうよ、雪ねぇ」


と言うと、私は大きく頷いて美夜の手を繋ぐと、私たちは一緒に高校を出て行った。


こんな風に、私の高校生活はみんなに見守られて静かに幕を閉じた。私は、ふと顔をあげて空を見上げる。彼女の顔を、思い浮かべていた。


本当なら、隣にあなたもいたはずなのにね。


萌梨。あなたも隣にいたはずのこの景色。今はここにいなくても、あなたの未来は守られてる。



だから、いつか……。






「で?今度はどんなドジ踏んだんですか?左手だから良かったけど、利き手の右手を怪我してたら、生活が更に困難だったのよ。馬鹿なの?馬鹿刑事なの??」


私は文句ばかりが勝手に口から湯水の如く溢れ出てくる。


卒業式の翌日。


私は坂井さんの部屋に来ていた。この人は勝手に退院して、自宅に帰ってタバコをふかしている。祐さんたちの言ってた通りだ。まったく。情けない。


顔にも擦り傷や切り傷がある。見た目、ちょっと痛々しい。私は食事を作って、一緒に食べることにした。片手でも食べられるように、カレーライスにした。じゃがいも、人参、玉ねぎ、鶏肉の王道のシンプルなカレー。坂井さんは辛党なので、ジャワカレーの辛口を多めに。坂井さんは、ウマイウマイと言って、たくさん食べてくれた。

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