第21話
東京で暮らす部屋は範子おばさんの自宅に近くで借りて、範子おばさんが子供の面倒を見てくれることになっている。それには滋も喜んでいるようだ。仕事が落ち着いたら、きちんと広めの部屋を借りる予定だそうだ。
「4月からは、祐さんも私も、社会人ね」
私が微笑んで言うと、祐さんも微笑んで頷き私の肩に手を置いた。
「そうだね。たまには愚痴をこぼしあおう。そのうち酒も一緒に飲めるかもな」
「それは、楽しみ!」
私が答えると、みんなは顔を見合わせて再び笑い合った。祐さんはたった2つ年上なのに、落ち着いていてとても大人だ。滋とは、正反対の性格だと思う。少しだけ、憧れの人だった。
「しっかし、お前頭いいのに、高卒で働くなんてなぁ。親父さんたち、嘆いたんじゃないの?」
滋が鼻息を荒くして言うと、私は苦笑いになった。
「お父さんとお母さんは、相変わらず私には無関心だよ。大学行かないって行ったら、そうか…って一言だけだったもん。働いてお金貯めて、いい人見つけて結婚する。どうせ大卒も高卒も、就職するところは同じでしょ?だったら早く社会に出て、自分の足で歩いていきたい」
私が言うと、祐さんは優しく微笑んで、
「偉い偉い。動機が偉い」
と言うと、滋は頭を横に振ってため息を吐き出した。
「そんなことないよ。それにしても滋こそ、大学で何勉強してるの?彼女取っ替え引っ替えして」
「人聞きの悪いこと言うなよ、ユキ。俺はな、運命の人を探してるんだよ」
「は?なにそれ?乙女か!」
私がツッコむ前に、美夜が滋を指差して笑いながら言った。
いい質問だよ、美夜!!
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