第20話
「ありがとう。来てくれるとは思わなかったから、凄く嬉しい」
「あいつらを迎えに行ってたから、遅れちゃったのよ」
範子おばさんがそう言って、白い歯をニッと剥き出して微笑むと、私は「あいつら?」と呟きながら範子さんの後ろの方から歩み寄ってくる人たちを見つけた。
そこに現れたのは、滋と祐さん、そして美夜ちゃんだった。
美夜ちゃんは梶原萌梨の妹で、私とも9歳年が離れている。現在小学3年生。なのに、中学生といっても通じるくらい大人びていて、とても綺麗な女の子だ。出会った頃は、誰かに怯えて、誰かを恨んで孤独に生きていた少女。今は前向きでその瞳は未来を夢見て輝いている。現実を直視できずにそっぽ向いて生きてきた美夜だったけれど、萌梨が全てをかけて守って、救出したお陰で、今は誰よりも大人っぽい考えを持って前向きに生きている。
範子おばさんの息子である滋は、現在現役大学生。私の一つ上。耳が隠れるくらい髪がふわりと揺れて、ちょっと見た目が無駄にイケメンで、…チャラい。
そして、祐さん。萌梨が愛した人。大学には行かず、今年から東京で部屋を借りて、こっちで就職が決まったそうだ。
「みんな、来てくれたのね!ありがとう!」
私は素直に嬉しくて微笑んで言うと、滋たちもにっこり笑い合って私を見つめてくれた。
「卒業、おめでとう!」
先日、祐さんには、子供が生まれた。
萌梨と祐さんの子供。萌梨は起き上がることは出来ないので、帝王切開で出産した。祐さんと美夜ちゃんはずっと静岡の祖父母の家で暮らしていたけれど、祐さんだけ東京で坂井さんの知り合いのツテで仕事のあてがついた。赤ちゃんまで祖父母に世話してもらうわけにはいかない、と祐さんは就職活動にずっと励んでいた。就職のためには、高校を卒業する必要があって、静岡で高校3年生をやり直して、一年浪人してちゃんと卒業した。
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