第15話

私はバッグを置いて坂井さんの頭をかく腕を掴むと、坂井さんはふいに私を見た。私は坂井さんを見上げて息を飲むと、ゴツゴツしたその肩に両手を乗せて、


「お姉さん。邪魔しないでくれますか。やらしいこと、してるとこなので」


と受話器越しにわざと聞こえるように言うと、坂井さんの唇を塞いだ。


「えっ!?」


インターホンから、こっちの姿は見えてるわけではない。でも、女の人は驚いて小さな悲鳴を上げると、坂井さんは驚きながらも、まるで彼女との縁をスッパリと切るように受話器を戻して、インターホンの通話を終了させた。玄関のドアを叩く音も、そこで終わった。


坂井さんは私を抱きしめて、唇を何度も左右にずらしながらキスを繰り返した。坂井さんの腕は私を抱きしめたり、うなじのあたりを優しく右手で愛撫したり、私の腕を自分の肩の後ろまで回して密着するように抱きしめていくと、どんどん激しくなっていくキスに私はとろけてしまいそうになった。


ようやく唇が離れると、私は深く息を吸って坂井さんにしがみつくと、


「勘違いしないで。あなたを助けただけだから」


と言うと、坂井さんも私を抱きしめながら少し笑ってソファの背もたれに寄りかかった。

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