第16話

「はいはい。助かったよ。あのオンナ、しつこくて困ってたんだ」


「誠意を持って別れ話しないから、付き纏われるのよ。その度にキスなんかしてちゃ、こっちの体がもたないわよ」


「もたなくなるまで、何するの?」


「えっ」


坂井さんは私の耳たぶをペロリと舐めた。その瞬間、背筋に電流がピリリと走って、おかしな気分になった。


「やらしいことは、しないんでしょ?」


「まぁな。やっと、やらしいこととキスは違うって、わかったか?」


「…そう言うことにしといてあげる。これ、犯罪じゃないんでしょ?」


「もちろん。気持ち良くなるだけだよ。嫌なことも何もかも、忘れさせてくれるヤツ。でも、お前はまだ10代だから、ここまでな」


「ふぅん。じゃ、私が20代になったら、その先も、ある?」


私はそう言って、坂井さんの顔を見つめた。坂井さんは目を丸くしているけれど、ふっと優しく微笑んで、


「無理だろ?ひとまわり以上下の女の子には、何年経っても手が出せない」


と苦笑いしながら言ってるのに、その手は私の唇をなぞっている。

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