第10話

私はキッパリと言って仁王立ちになった。坂井さんは肘をかけながら私を見上げて、


「頼むよ〜!夕飯奢る!なんでも買ってやるから!3千円以内で!」


とだるそうに言うけど、全然真剣味がない。


「そもそも3千円のどこが『なんでも買ってやる』になるんでしょうか?安すぎる」


「え?金額の問題?でも俺も安月給なんだよ。こないだもちょっとミスったら減給されちゃってさぁ」


「じゃあ自業自得じゃない?この際お嫁さん貰った方が得策かもしれないけど!」


「ん〜。やだ」


子供みたいだ。私は腕まくりをして、ベランダに出られる窓を開けて網戸だけ閉めると、


「奢ってくれるんでしょ?とりあえず、掃除くらいするわよ。邪魔しないでね」


と言って微笑むと、坂井さんは嬉しそうに笑って、


「さすが、出来る女子高生!頼むよ、雪子」


と無邪気に言いながらタバコをふかした。


「どうでもいいけど、未成年と密室にいてタバコ吸う神経が分からない。ベランダで吸ってください!」


と私はベランダの方に指差して言うと、坂井さんはのっそりと立ち上がり灰皿を持って、


「へいへーい」


と言いながらベランダに出て行った。

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