第3話

私が小学校で女子に虐められていた時、滋は学年も違うのに、何故か気付いて駆けつけてくれた。それからは、滋は授業以外は私のそばにいるようになったので、次第にいじめも減っていった。弱いものいじめが嫌いな滋は、どんな時でも私を見捨てたりしなかった。当たり前のようにそばにいてくれて、いつも守ってくれていた。…とくれば、そりゃ好きになるでしょう?この人のそばにいれば、安心だ。私はそう思って、滋がそばにいることが、当たり前になっていったんだ。


そんな滋と私は同じ高校に通っていた。私が一年生、滋が二年生。その滋が、ある一人の女の子を気にかけていることに気づいた。


彼女の名前は、梶原萌梨かじわらもり


明るくて感情表現がすぐ顔に出る素直な明るい女の子だ。でも、進んでみんなの輪に入るようなタイプでもなく、多分自分が気を許した相手にだけ、この素直な笑顔を見せるのかもしれない。


萌梨と仲良くなって、教室にいる時や移動教室の時はいつも一緒にいるようになった。でも、滋は何故か遠くで見ているだけで、話しかけてこない。気にかけてるくせに。学校では人気者でモテて彼女が途切れることはないくらいなのに、何故か萌梨には話しかけられなかった。うちの教室に来ても、女の子に囲まれて楽しそうに笑いながら話しているくせに、視線は萌梨の姿を追っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る