03 1度目のループ(4)
ジェーンが姿を消して、すぐにヤスカとリリアンが姿を現した。2人とも何事かと怪訝な表情をしている。2年前の時点では、2人は私の一番のお気に入りのメイドたちではなかったから。
「秘密のお願いがあるのですが、聞いてくださるかしら?」
2人はビクッとした表情になったが、真面目な顔に一層生真面目な表情を浮かべてうなずいた。
「お忍びの馬車を用意してくださる?これから緊急で人を訪ねます。ただ、先方にはご連絡をしていませんので、無駄足になるかもしれません。従者のタルボットとラドヤーを連れて行きます」
「かしこまりました。皇太子妃様」
「承知いたしました」
私は2人のメイドと2人の従者だけを連れて、幼な子3人を抱えて皇太子妃のお忍び用馬車に乗った。タルボットとラドヤーも最後まで私たちを守ろうとしてくれた従者だ。メイドと従者の中では、たったこの4人だけが最後まで私たちの味方だった。
私はそっと御者にドヴォラリティー伯爵の屋敷に向かうように告げた。今日、会えるかどうかはわからない。一種の賭けだ。
***
「でもダメだったのよ。あなたに会う前に、私たちが乗った馬車は攻撃されたの。偶然の事故とは思えない。あれは攻撃よ」
暖炉の中で赤々と燃える炎を見つめて、私はひっそりとつぶやいた。横にドヴォラリティー伯爵が一緒に座り込んで、私の話に聞き入っていた。
転生の話は、彼には伏せた。前世の話は時代的に世界が変わり過ぎていて、おそらく彼には理解できない。
最初のループは2年前に戻った。
あっという間に死に至ったので、何がなんだか分からない。
誰が私たちを殺したのか分からない。
「最初は2年前に戻って私に会いにこようとして、また亡くなった。次に気づいたら5年前に戻っていた。そういうことか」
私はうなずいた。
「これが最初の巻き戻りの顛末よ」
私は横に一緒に座ってくれている彼を見つめた。
ドヴォラリティー伯爵の豊かな茶色い髪の毛と、穏やかで理知的な輝きを宿すブラウンの瞳が、暖炉の炎に照らされて不思議な魅力をまとっていた。
彼の表情は注意深く観察しても、私には読めない。彼はまた無言になり、私の話を反芻するかのように考え込んでいる。
「ひとまず、アンドレア皇太子に会うわ」
私はドヴォラリティー伯爵にきっぱりと言った。
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