第10話 かいらいのまい
(はぁ~~~~……。)
心のなかで今回、何度目かもわからないため息をついていた。
通話で安請け合いしてしまった以上、早々に決着をつけなくちゃいけない。
でも、この方法でいいだろうか。
わたしは悩みながらも、眼の前にいる『ヨカゲシノブ』と話しを続ける。
今回の一件の始まりである30代くらいの女性、KAGURAプロの社長からの電話と依頼の件から始まった一連の話を。
元々、ある理由でKAGURAの先代社長が私的に『傀儡舞』を使用したことが発端だった。
傀儡舞は災厄以前から問題になっていた、古典芸能の後継者不足による失伝に備えるために行われていた研究であり、それは文章や映像によるデータベースの構築に留まらず、発展的な
その計画自体はある程度、成功しており現在も先史研究博物館の様な研究機関に行けばその所作を見学できるし、なんなら傀儡舞から教えを受けた次世代の能楽師が誕生しているくらいだ。
だが傀儡舞は別の用途にも使用可能だったのだ。
それはつまり、人格のコピー。
いくら所作を覚え込ませても、振る舞いなど
そのためA.I.に感情を持たせるより早く研究が進められていた、人の脳のデータをまるまるコピーしてしまう方法が傀儡舞には採用されていた。
「はぁ……。」
彼女はそれらの事実を前にイマイチ掴みきれていない感じだ。
まあ、わたしも半分以上資料からの受け売りでそれがどの程度の技術なのかは理解しきれていない。
でもそこは今回の件で大きな問題じゃない。
ここからが本題だ。
「ここから先の話しを聞くかはあなた次第ですし、聞いたら今後の選択が必要になります。」
わたしは念を押す。
別に彼女にとっては聞かない選択肢もある。
ただそれで納得できるかは分からないが、少なくともネット上の『ヨカゲシノブ』を別人格としていくなら問題はない。
でも、彼女は選ばないだろう。
それほどまでの恨みの念がこの部屋には溢れている。
「聞きます……、聞かずに後悔するよりマシですから。」
か細い声で返すその声に、わたしは全てを話す決心をした。
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