第5話 傀儡舞

『傀儡舞』。

 簡単に言えば、それは人格トレースプログラミングだった。

 特定の人物の行動や思考を読み取り電子的に再構築する代物。

 古くからあったシステムの一部らしいが、災厄ディザスターの混乱で失われたものであり、最近再構築されたらしい。

「それが何でKAGURAうちみたいな芸能事務所に関連するのですか?」

 ワタシはその疑問を回天堂へぶつけてみた。

 それは単純な好奇心からだった。

 そしてどの言葉を聞いても相変わらず社長たちは仏頂面だ。

 芸能関連でやっていくなら対外的にはもっと愛想よくしないと。

 ワタシたちは夢売ってるんだから。

「傀儡舞は元々、学術研究のために開発されたシステムでした。」

 回天堂が話を始めた。

 研究目的なら関わるのは研究所や総合企業ではないのだろうか。

「その研究というのが失われゆく古典芸能の保存。」

 ますます訳が分からないと思っていた時、突然社長が口を開いた。

 ワタシを含む全員が「えっ!?」と声をあげる。

 なんで社長がそんな事を知っているんだ?

 そんな中、社長はただただ下を向いて、手元の湯呑みをコロコロと横へ揺らしている。

「はぁ、……やっぱり社長さんはご存知だったんですね。」

 小さなため息を漏らしながら回天堂が社長に話しかける。

 どうやら彼女はその事を知っていたらしい。

 いや、まぁ当然か。

 その事を調べに来たんだから。

 そして、社長はことのあらましを語り始めた。



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