第4話 訪れた場所
依頼を受理した翌日。
わたしが向かったのは芸能事務所『KAGURAプロダクション』だった。
自分の意志というより、まずは状況確認をと依頼人が所属する先に確認に赴いたのだ。
依頼人は『KAGURAプロダクション』の社長。
依頼内容はネット上で活躍する同事務所所属のアイドル『ヨカゲシノブ』について。
ヴァーチャル系アイドルとしては知らぬものはいない人物だが、いわゆる「中の人」については一切が非公開の人物。
五感体感型ヴァーチャルリアリティの実稼働とともにネットと現実の境界があいまいになってきた昨今でも「中の人」を探るのはある種のタブーだ。
それだけにヨカゲシノブと名乗った人物が本当にネットアイドルの「中の人」と断定できないため、わたしは職場へ確認に向かったのだった。
そんな出かける前だった。
会社で出発の準備をしていると、「ちょっといい?」と声をかけられた。
「うげっ……。」
思わず声が漏れる。
その声を聴けば、うちの部署の課長であることは一発で分かる。
何せ、そのサングラスの内側にはわたしと同じ顔、正確には数年後の自分の顔がそこに有るのだから。
「な、なんですかー?」
白々しく声を上げながら振り返ると予想どおりそこには課長が不敵な笑みをたたえながらっていた。
「KAGURAプロへ行くのよね、ちょうどいいからこれについても確認して来てくれる?」
そういって資料が詰まった封筒を手渡される。
どうやらわたしに拒否権は無いらしい……。
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