第3話 訪れた人

 その日、事務所を訪れてきたのは20歳前後の女性。

 新人社員なのか、パンツスタイルのスーツを身に着けているがまるで様になっていない。

 言うなればスーツに着られている感じ。

 そんな彼女は応接室で、事務所うちの社長とマネージャーそしてワタシを前にしている。

 あ、ワタシはモニター越しね。

 アバターを使って活動するネットアイドルとしては秘密保持契約Non-Disclosure Agreementつまり、NDAを交わしていない人の前に姿を晒すわけにはいかないのだよ。

 相手も話しが聞ければ良いだけだったようなので、彼女も別段その事を気にしていない様子。

 もっとも彼女の対応も社会人として、いかがかなとは思ったけど。

 最初に社長たちに手渡された名刺。

 そこに彼女の名前は記されておらず、中央に社名だけ記載されていたの。

「弊社では社員一丸となって案件に対応するため、あえて個人の名前を知らせないようにしているんですよ。」

 平然とそういう彼女(仮に会社名から回天堂としておこう)は、とある調査のために訪れたそう。

「御社のアバター操作について技術的な質問があります。 『傀儡舞くぐつまい』と言うプログラムをご存知ですか?」

 回天堂が藪から棒な質問にワタシは困惑した。

 傀儡舞などと言うプログラムに覚えはないし、一体それば何だというの?

「初めて聞くプログラム名ですが、何か問題でもあるのですか?」

 思わずワタシは口を出した。

 社長たちからは必要以上にしゃべるなと言われていたが、どうも気になってしかたなかったのだ。

 ワタシの言葉を聞いて社長たちは嫌な顔をしたが、回天堂はそれを合図と説明を始めた。

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