第2話 始めの電話

「はい、古物商こぶつあきないの株式会社『回天堂』でございます。」

 デスクに置かれた古めかしい電話機が2コール鳴るのを待ってから受話器を取った。

(今どき独立した電話機なんて使っているトコないだろうに……)

 そんな事を思いつつも口からは営業的な言葉が自然と流れる。

 いやはや、わたしも慣れてきたものだ。

 そんな事を思いつつ相手の出方を待っていると、ボソボソと受話器から声が聞こえてきた。

「御社では買取販売だけでなく、捜索を受け付けてくれると聞いたのですが……。」

 名前も社名も名乗らずに本題に入ろうとしたのは恐らく女性。

 年齢は20代から30代と言ったところか。

 声は小さくやや早口だが、特に焦った気配はない。

 そこでわたしは依頼の手続きについて回答することにした。

「遺失物の捜索でございますね。 そういたしますと確認が必要ですので、お手数ではございますがお問い合わせフォームへご入力いただけますでしょうか。 ご入力頂いた内容をもとに、弊社からご確認をさせていただきますので。」

 わたしは定型化した案内の文言を返す。

「そうですか、分かりました。」

 相手はそう返し電話を切った。


 ご時世柄、遺失物の捜索の依頼は多い。

 そのため、遺失物の内容によって回天堂社内うちでも担当部署が異なる。

 今回はたまたまわたしが電話を取ったが、必ずしもうちの部署が担当する事柄とは限らないのだ。

 それにわたしもただのアルバイトなのだから可能な限り、自分が担当するのは避けたい。

 そう思っていたのだが、後日この件はわたしの担当となった。

(はぁぁぁー。)

 わたしは心のなかで大きなため息をついた。

 マジでやりたくない。

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