第2話 始めの電話
「はい、
デスクに置かれた古めかしい電話機が2コール鳴るのを待ってから受話器を取った。
(今どき独立した電話機なんて使っているトコないだろうに……)
そんな事を思いつつも口からは営業的な言葉が自然と流れる。
いやはや、わたしも慣れてきたものだ。
そんな事を思いつつ相手の出方を待っていると、ボソボソと受話器から声が聞こえてきた。
「御社では買取販売だけでなく、捜索を受け付けてくれると聞いたのですが……。」
名前も社名も名乗らずに本題に入ろうとしたのは恐らく女性。
年齢は20代から30代と言ったところか。
声は小さくやや早口だが、特に焦った気配はない。
そこでわたしは依頼の手続きについて回答することにした。
「遺失物の捜索でございますね。 そういたしますと確認が必要ですので、お手数ではございますがお問い合わせフォームへご入力いただけますでしょうか。 ご入力頂いた内容をもとに、弊社からご確認をさせていただきますので。」
わたしは定型化した案内の文言を返す。
「そうですか、分かりました。」
相手はそう返し電話を切った。
ご時世柄、遺失物の捜索の依頼は多い。
そのため、遺失物の内容によって
今回はたまたまわたしが電話を取ったが、必ずしもうちの部署が担当する事柄とは限らないのだ。
それにわたしもただのアルバイトなのだから可能な限り、自分が担当するのは避けたい。
そう思っていたのだが、後日この件はわたしの担当となった。
(はぁぁぁー。)
わたしは心のなかで大きなため息をついた。
マジでやりたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます