第5話 オレンジ
☆
大慌てで夏花が何かを取りに行った。
俺は?を浮かべながら夏花のその背中を見届けてから授業間近で戻って来た彼女を見る。
彼女は息を切らしながら俺に合図をして戻って行った。
俺はそんな夏花を見ながら外の景色を見る。
4月半ば、か。
もう直ぐ俺の誕生日だな。
そう考えながら俺は外の景色を見渡す。
そして俺は苦笑した。
☆
夏花、俺、雪乃。
その組み合わせで放課後。
夏花は部活で雪乃と俺で家まで帰ろうと思い外に出た。
すると俺達を見ながらヒソヒソと笑う同級生が、というか。
多分、雪乃を見て笑っている。
居るんだよな、ああいう奴らが、だ。
するとそんな女子達に夏花が説明する様に何かを言う。
夏花の言葉に驚きと戸惑いを浮かべながら夏花から離れて行く。
そんな夏花を見る俺達。
そして俺も駆け寄る。
「夏花。有難う」
「分かってくれたみたいだ。彼女らも」
「お前は良い奥さんか保母さんになりそうだな。ハハッ」
「あはは。そういう系は苦手だ。私には向いてないよ」
「まさか。そうは思わないぞ。似合ってるって思うぜ」
「あはは。そういうのは孝だけだよ。孝。有難う」
それから謙遜する夏花に俺は苦笑いを浮かべながら彼女の頭を撫でた。
夏花は慌てながら赤面する。
「な、何をするんだよ!」
「すまん。撫でたくなったからな」
「な、撫でたくなったって」
「...お前は本当に成長したよな」
「いやいや。子供扱いすんなよ」
「すまん。あはは」
「ったく」
夏花は緊張する様な感じを見せる。
俺はその姿に疑問符を抱きながらもツッコミは避けた。
何かまた余計な地雷を踏みそうだしな。
そう考えながら雪乃を見る。
「夏花ちゃん。有難う」
「当たり前。だって私の大切な友人で幼馴染だしね。救うのは当然だよ」
「...うん」
「...深く考えに。私は大丈夫だから」
それから夏花は笑みを浮かべた。
そして手を挙げてから俺達に挨拶をして颯爽と部活に向かう。
俺はそんな姿を見ながらオレンジ色になっている校舎を見る。
そうしてから俺は雪乃を見た。
雪乃は嬉しそうな感じを浮かべている。
「雪乃。嬉しそうだな」
「うん。嬉しいかも。だって夏花...あ、いや。何でもない。ゴメン」
「?...そうか?」
「うん。何でもないよ。有難う」
それから雪乃は手を差し出してきた。
俺はそんな姿に目を丸くする。
そして苦笑いをまた浮かべながら雪乃のその手を握りしめる。
2人だけの内緒の時間だ。
「雪乃は甘えたがりだよな」
「だって寂しかった。本当に寂しかった。孝くんが居ないなんて考えられない日々だったから。だから孝が居る。それが嬉しい」
「...」
「孝くんも帰りたかった?」
「...まあ本音を言うとな。だけど帰りたくても帰れなかった。だからもう諦めていたのもあったよな。真面目に」
「...うん」
「こうしてお前らに会える。それが奇跡の様に感じるよ。マジに」
「...」
それから雪乃が何を思ったか。
寄り添って来た。
そして頷いて涙目になる。
俺は!となりゾクゾク感じる。
「えへ。孝くんの香りがする」
「馬鹿。雪乃!な、何をしている!」
「だって子供の頃、よくこうしていたよね」
「馬鹿野郎!あ、あれは子供の頃の話だ!」
「うん。知ってるよ」
「じゃ、じゃあ」
「だけど孝くん。私達は今でも子供だよね。高校生なだけで」
まあ確かにな!
だけど違う、違いすぎる。
俺達はもう恋愛をまだ知らない子供ではない成長した子供だ。
だ、だからいくら雪乃とはいえこう寄り添われるとマジにマズイ。
華やかな女性の香りがする。
「...あ。孝くん。河川敷。綺麗だよ。何だか」
「オレンジ色に染まっているな」
「孝くんの好きそうな色だね」
「...それはまあ。確かにな。好きそうな色...まあ好きな色だな」
「...綺麗だね」
「あ、ああ。確かにな」
それから雪乃は河川敷の石の階段をゆっくり降りて行く。
外れてから河川敷に腰掛ける。
そしてニコッとしてから雪乃は俺に横に座る様に促した。
俺はその事に苦笑いをまた浮かべながらそのまま河川敷の川を見る感じで腰掛けた。
「雪乃はこういう自然豊かな場所は好きなのか?」
「うん。だってずっと孝くんが横に居る。それだけで私は何もかもが幸せかな」
「...そ、そうなんだな」
「...孝くんはそう感じない?」
「そ、そうだな。しかし雪乃。まあその。これ何だか恋人同士みたいだな」
「...え?」
雪乃に俺は冗談混じりでそう言う。
そんな雪乃は顔を背けた。
数秒間固まってから。
それから雪乃はゆっくりと頷いてからワタワタしながら俺を見てくる。
顔が赤くなっている。
雪乃はハッとして自らの姿に思いっきりその場で立ち上がる。
そうしてからそっぽを向いた。
一言。
「さ、先に帰るね」
と言ってからそのまま駆け出して行く。
後に残された俺は訳も分からずその姿を見てから目をパチクリした。
雪乃は何だか恥じらっている様に見えたが?
まさかな。
俺らの関係から言ってそれは無いか。
そう考えながら俺は肩をすくめた。
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