第3話 胸のチクチク
☆
クラスメイトに孝が必死に説明をしていた。
私はそんな孝を見ながら横に居る雪乃を見る。
そしてまた視線を孝に戻した。
クラスメイト達は納得した様にやれやれな感じで解散してから散り散りになる。
「にしても雪乃」
「うん。何?孝くん」
「...いや。やっぱいい。すまん」
孝はそう言いながら黙ってしまう。
私はその姿を訝しげに見ながら居るとチャイムの音が聞こえた。
慌ててから雪乃は頭を下げてからそのまま駆け足で去って行く。
私はそんな姿を見送りながら胸のチクッとした痛みを感じていた。
うん?何だこれ?
「オラー!席に着けー」
「へーい」
「はーい」
担当教諭にそう言われてから私は考える暇もなく椅子に腰掛ける。
それから授業を受ける。
そして黒板の字に集中した。
間も無くテスト。
そして孝の誕生日だ。
これら一大イベントを避けては通れない。
☆
私は授業を終えてから孝の元に向かう。
すると孝は笑みを浮かべて私を迎え入れる。
それから変わらずに2人でそのまま階段を上がって屋上前に来る。
屋上は柵の無い意味で入れない。
生徒の自殺予防の為だ。
その為に私達は屋上の前。
屋上の扉の前でご飯を食べるのが習慣になっていた。
「孝。好き嫌いしないの」
「豆っつーのがなぁ」
「もー。身長。大きくならないよ?」
「うーん」
孝は目の前の袋に入っている豆パンの事で悩んでいた。
どういう事かというと外に買いに行くのが遅れた。
そして何故か生徒が押し寄せた。
その為に売店に豆パンぐらいしか売ってなかったのだ。
孝はブツブツ呟きながらそれを購入した。
「孝くん。これ...食べる?お弁当」
「ああ。そこまで世話になる気は無いよ。...午後に備えて食べる。何としてもな」
「私、そっち食べようか?」
「まあその気持ちだけ受け取っておくよ」
「もう。駄目だよ。雪乃。孝を甘やかしたら」
「で、でも孝くんは何だか嫌そうだから」
「いや。嫌なんじゃ無いよ。雪乃。ただまあ。苦手なだけだ。色々とな」
雪乃は心配そうに俺を見る。
そんな目で見られては食べざるを得ない。
南無三!
俺はそう考えながら食べてみる。
だが昔食ったクソマズイ豆パンより遥かに美味しかった。
☆
「なあ。孝。UNOしない?」
「おお。良い...つーか持って来て良いのかよ」
「えへへ。内緒だぞ。今日の事」
「はあ。まあ良いけどな。ったく」
それから私はUNOを取り出す。
期待する様に雪乃も見ていた。
私はニヤッとしながら。
孝は苦笑しながらUNOをし始める。
「懐かしいよな」
「うん。UNO。昔よくしていたよね。これ実は子供の頃のUNOカードだよ」
「ああ。そうなんだな」
「うん。えへへ」
「夏花はUNO好きか?」
「うん。大好きだよ。あったりまえじゃん」
「雪乃は?」
雪乃はうーんという感じで悩む。
口をへの字にしてぷくっと頬を膨らませた。
私は?を浮かべてから雪乃を見る。
雪乃は口をへの字にしたまま話した。
「夏花ちゃんが強すぎるから嫌い」
「あっちゃー」
「お前は何をしたんだよ。俺が居ない間によ」
「何をって。徹底的に遊んだだけ」
「嘘ばかり。バッキバキに私の心を折ったでしょう」
「夏花。お前この野郎」
「あ、あはは。UNOは止めるか」
「そうだね」
そうなるとどうするか。
そう思って考えを巡らせると今度は雪乃がモジモジして何かを取り出す。
それは誰がどう見てもトランプだった。
私は違反物だらけに苦笑した。
「トランプならまだマシ」
「そうか。ならババ抜きとかするか?」
「私、ポーカーしたい」
「何で学校で博打すんだ。怒られっぞ」
「いやいや。そもそも孝も同罪だから。私達に関わった時点でね」
そう言いながら私はジト目で孝を見る。
孝はまた盛大に溜息を吐く。
それから肩をすくめた。
私はその顔にニコッとしながらトランプを配りながら雪乃を見る。
孝を見ながらほわっとしている。
「?」
私の胸がまたチクリと痛む。
だけど原因がイマイチ分からない。
朝も赤くなったりした。
原因は何なのだろう。
そう考えながら私は胸に手を添える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます