第2話 2人目

俺の幼馴染は3人居た。

居たってのは文字通りだ。

3人のうち会えているのは2人のみ。

残念ながら1人とはもう会えないかもしれないのである。

まあそれならそれでも良いのだが。


俺のせいもあるのだから。


そう考えながら俺は周りを見渡す。

教室内には夏花。

それから智樹が居る。

因みにだがもう一人の幼馴染はクラスが別だ。

俺と夏花、それから智樹は同じクラスなのだが...こればっかしは致し方が無い。


「...」


外を見てみる。

4月は忙しい感じだ。

何か...俺の誕生日もあるしな。

まあどうでも良いとは思っている。


そんな事を思いながら俺は外を見た。

因みに俺だがもう分かるかもしれないがこの学校は途中から入って来た。

高校2年生になる前の半年前から通って来た。

俺はあくまで途中参加の身。

なかなか友人が作れないと思っていた中で智樹が俺に接近して来た。

まるで初めからの縁だったかの様な感じで、だ。


俺は最初の頃はタジタジした。

何せ最初の学校では友達とかの問題があったから、だ。

だからタジタジしてしまった。

だけどそれでも智樹は諦めずに優しく俺に接して来たから俺はずっと相手をしていると友人と化した。


「おーい。孝。授業終わったぜ」


智樹のそんな言葉にハッとして顔を上げる。

それから智樹を見る。

苦笑しながら智樹は俺の顔を見ていた。


「呆然とし過ぎだぞ。お前よ」

「あ、ああ。すまん」

「どうしたんだ?そんなにボーっとして。前の学校の事でも思い出したか?」

「...ああ。女友達を思い出してな。俺の」

「お前に女友達が居たのか?」

「ああ。居たよ。完全に別れたけどな。それから俺、前の学校では陰口ぶっ叩かれたしな」

「...そうなんだな」


唯一の良い思い出っつったらもうそれしか無いんだが。

女友達との記憶だ。

俺は苦笑いで思い出す。

すると智樹が顔を顰めた。


「そんなクソ野郎はぶっ飛ばさないと話にならないぞ。孝」

「まあな。だけどそれが全てか?って思ったらマジに手が出なくてな」

「甘いわ。お前」

「甘いかな」

「俺だったら世間体気にせずマジに世間から抹殺するけどな」

「そうか」


それから智樹はボクシングポーズをする。

俺はその姿を見ながらまた苦笑する。

すると教室のドアが開いた。

それから夏花が教室に入って来た。

どうも部活の先生に呼ばれた案件は終わったらしい感じだ。

するとその背後からピョコっと顔が覗いた。


「雪乃」


瀬口雪乃(せぐちゆきの)

俺を見つけるなりクリッとしたその目線を向けてくる。

栗毛色の長い髪の毛に穏やかな顔。

どちらかと言えば優しい感じの雰囲気だ。


ニコニコしながら駆け寄って来た。

因みにこの雪乃だが。

実は場面緘黙の疑いがある。

ただ疑いだが。


どういう事かというと特定の人物の前で無口。

寡黙になるのである。

話せる人物は俺、夏花、家族となっている。

それ以外の人物の前では寡黙になる。


「孝くん」

「よお。雪乃。元気か」

「うん。元気だよ。夏花...ちゃんは」

「私も元気だよ!」


それから雪乃はニコニコしながら頷いた。

俺はその顔を見ながら柔和になる。

因みにだが。

この学校では雪乃みたいな子の理解は結構進んでいて学生に話をする機会が多く。

先生達の間でも理解が進んでいる感じだ。

学校にも雪乃は来やすいのでは無いだろうか、とは思う。


「なあ。孝」

「おう。どうした智樹」

「元気そうだな。雪乃ちゃん。俺は安心したぞ」

「お前は本当に母親みたいだな」

「母親っつーか父親じゃね?」

「確かにそうとも言うかもな」


それから肩をすくめる智樹。

俺はその姿を見てから雪乃を見る。

すると雪乃がニコニコしながら俺の腕に自らの腕を絡ませた。

俺は動揺する。


「お、おい。雪乃。いきなりどうした」

「雪乃ね。何だか孝くんの腕を取りたくなったから」

「ば、馬鹿野郎。んな事したら」


するとクラスメイトが顔を引き締め変異した。

プ◯デタ◯か何かかコイツら。

そう考えながらクラスメイトを見る。


「オイ。何を見せつけてんだこのクソ馬鹿」

「クソ野郎が」

「このクソハゲ殺すぞ」


ほら面倒だ。

そう考えながらクラスメイトを苦笑しながら見てみる。

当然、雪乃は黙り込むが。

夏花が代弁した。


「落ち着け」


その一言で黙るクラスメイト達。

所詮は女かコイツら。

そう考えながら俺はまた苦笑いを浮かべる。

そして智樹を見る。

智樹は代表者の様に宣言した。


「まあまあ。落ち着けテメーら。先ず恋という存在が悪い。孝は悪くねぇよ」

「ん?待てや。その理屈だとよ。つまり鳩島はマジに女子に愛されている屑だって事だよな?」

「...あー、そう解釈するか。ははは。こりゃ一本取られた!」


こ、この。

智樹の馬鹿野郎が。

火に油を注ぎやがった。


まあこうされた以上...いや。

理屈が成り立たないか。

考えながら俺は額に手を添える。


「で?マジに好きなのか?」

「いや。好きは好きだろうけど多分恋愛じゃないだろう」


俺は雪乃を見る。

雪乃はその俺の姿に赤面する。

何も言わないが赤面する。

え?どういう事だ。

そう思いながら俺は?!となる。


「.....」


周りが俺に対して沈黙をする。

ジト目になった。

コンパスの針とかの武器を用意し始める。

俺はというと冷や汗をかく。

な、ん、だと。

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