第65話

その日の帰り道はさりなと伊織で歩いて帰った。



月明かりに照らされた夜の道を2人で歩く。





「悪かったな。だいぶ、傷つけて。」





「ううん。勝手に彼女になって、勝手に苦しんでたのはわたしだもん。



一旦気持ちをクリアにできて、むしろすっきりしてる。」





「さりな。ごめん。本当。好きだったから。玲蘭のこと。だから、さりなのこと、見てやれなかった。」




「仕方ないよ。私ね、でも本当、一瞬、バンドもダメになっちゃうかも、って思ったら、なんか嫌だったの。




彼女じゃなくてもいい、伊織の隣で歌いたいな、って思ったんだ。




だから...彼女じゃなくていいから、隣にいさせて.....。」




伊織はうん、って頷いた。




「ありがとう、さりな。本当、今までごめん。」




さりなは、伊織に抱きついた。





「好き。好き。どうしようもないくらい。好き。」





「待ってて、さりな。俺の気持ちにケリが着くまで。」




さりなは伊織の服を涙で湿らせながら頷いた。

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