第62話
お風呂から出て、ベランダに出る。
この家のベランダから見える景色が玲蘭は好きだった。
「玲蘭。」
隣の部屋の伊織もベランダにでてきた。
「伊織。」
「昼間は........ごめん。ちょっと、ちゃんと、話しがしたい。昼間みたいなことはないから、部屋に来れる?」
「うん。」
玲蘭は、伊織の部屋に向かった。
伊織は勉強するためのデスクに座っていたので、玲蘭は少し離れた位置に座った。
「昼間は、ごめんな。楓からいろいろ言われて、むしゃくしゃしてた。
どうかしてたよ。」
「ううん。あの。私も、話しがあって。」
「うん、聞くよ。」
「私、中1の頃から、ずっと伊織のこと、好きだった。
さりなちゃん、っていう彼女ができても、見ているだけで、良かったの。
生徒会室でキスされたとき、
急に世界が変わったの。
すごく、ドキドキした。
嬉しかった。
両思いだったんだって。」
「それは俺もだ。ずっと好きだった。」
「だけど、ずっとこうも思ってた。
お互い、兄と妹になった運命を受け入れなければいけないんじゃないかって。」
伊織は黙った。
「私ね、本当、嬉しかったんだよ...。
だけど、受け入れないといけないって今は思ってる。」
「玲蘭。」
「だから、伊織とはちゃんと兄と妹になりたいな。」
伊織はしばらくなにも言わずに、他所をみているような素振りを見せた。
「愛の形を変えても、お互いだいすきになれたらいいなって言いたかったの。今日は。」
「そうだよな。
好きな気持ちばかり暴走して、俺、玲蘭まで
知らないうちに傷つけてた。
折り合いをつけるの、お互いに時間がかかるかもしれないけど、
俺も、
この運命を受け入れるよ。」
「伊織。」
「玲蘭。」
「ん?」
「これで、最後にするから......キス、させてくれない?」
「でも。」
「本当に、最後だよ。」
玲蘭は伊織にゆっくり近づいた。
伊織は玲蘭を抱きしめて、涙を流した。
伊織との最後のキスは伊織の涙の味がした。
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