第60話

「ねぇ、そういえばさ、いつから朝比奈って名乗るの?」




さりなは話題を変える。




「中学卒業までは旧姓かな、って思ってるんだけど.....。」



「そっか!今回の騒ぎもあるし、みんな好き勝手いろいろ言いそうだもんね?



あ、てか有ちゃんといりっちが、いろいろしたみたいでごめんね。私から、ちゃんと言うから。



これから雨宮さんじゃなくなるし、ややこしくなるから、下の名前で呼んでもいい?」



「う、うん。」




「玲蘭にも、私たちのライブ見にきて欲しいな。



私、絶対このバンドをまた盛り上げる!

そんで今度は、お互いに我慢することなく、ちゃんと仲間になりたいな、と思ってるの。」




「そういえば、バンド名、なんていうの?」




「Ailes de rêve(エールデレーヴ)よ。」




「フランス語?」




「え?なんでわかるの?」




「レーヴが夢って言うのをどこかで聞いたわ。」





「そう!辞書で引いたの。英語じゃなんかありきたりだからって。洋一が。



夢の羽って意味なの。」




「夢.....。」




「夢なんて、4人とも台逸れたもんは今はないけどね。」




「でも、おしゃれだね。」




「うん、私も気に入ってるの。」




「見に行きたいな...ライブ。」




「うん、来てきて!」




「逢沢さん、ありがとう。話しかけてくれて。

私も伊織への想い、断ち切って、



本物の兄と妹になりたいな。」




「ううん、わたしこそ、玲蘭のおかげで、私の中のモヤモヤがやっと晴れそうなの。



だからお互い、新しい一歩を踏み出せたらいいよね!」




「うん。ありがとう。逢沢さん。」




「さりなでいいよ!」




「うん、さりなちゃん、ありがとう。



おかげで、家に、帰れそうだよ。」





「私みたいに変な男の家に行ったまま帰らない最低な母親もいないのに、家に帰らないなんて贅沢よ!」





「ごめんなさい。」





「何かあったら言って。私の連絡先、登録してくれる?」




「うん。ありがとう。」





お互いのSNSを交換して、カフェを後にした。




玲蘭の後ろ姿をみて、さりなはニコッと笑った。




さりなはよーし、がんばるぞ!、と歩き出した。




そして電話をかける。





「あ、もしもし洋ちゃん?今から会える?あの曲完成させようよ。」




『え?今から?なんだよ唐突に!』




「今なら神曲が書けそうな気がするのよ!」




洋一を突然呼び出して、さりなは新しい一歩のための曲を書く決意をするのだった。

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