第57話

級友たちは皆、好きな人に告白したい、とか、





付き合ったりしたい、といつもそんな話をしている。






身近な友達のさくらたちは恋人よりも勉強だから、そう言った話はしないからか、






玲蘭の中に、どうしたいか、なんて明白な気持ちはなかった。







ただ、







明日も伊織に会えたらいいな。







そんな気持ちは常に持っていた。






でも、彼の生活はあの事件以来荒んでいった。






次第には学校に警察が来ることもあり、その度に学内では伊織の噂が飛び交った。






『今度は万引きしたらしい。』





『先輩10人を病院送りにしたらしい。』






友達も伊織たちを悪く言ってばかりだった。






そんな伊織を、玲蘭は好きだなんて言えず、心の中にしまっていた。




信じていた。







噂になっているようなことは誤解であると。








そして、内緒の片想いをしていた。







見ているだけで良かった。







だから、あの日の生徒会室での伊織のキスは衝撃的だった。






自分の世界が、






変わった。







これ以上の関係に、なってみたい自分が、







疼き出した。

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