第52話
伊織がスタジオに入ると、既にみんな到着していた。
少し表情は強張っている。
「よぉ。」
楓が声をかける。伊織は無視して、ベースバックを置く。
「来たじゃねぇか。」
「さっさと練習、やるぞ。」
「その前に、おまえ、やることあるだろ?」
「は?」
「謝れよ。俺らに。」
「楓!辞めろよ!」
洋一が止めに入った。
「嫌だね。さりな傷つけて、なに平気な顔で練習しようとしてんだよ。ありえねーだろ!!!!!」
「楓、それについては、いいの、私も今日、伊織とはちゃんと話そうとしてて......。だから、いいのよ。」
「俺は嫌だね。謝るまでこんな奴とバンドやりたくないね。」
「楓!」
さりなは怒ったが、楓は無視した。
「自分勝手な野郎にはちゃんと反省してもらわないとな。なんとか言えよ!伊織!!!」
「反省?なにを?そもそも、このバンドの存続と、さりなと俺の関係は全く無関係だぜ?おまえに指図される由縁ないけどな。」
「さりなに気を持たせといて、雨宮玲蘭といい関係になったらポイ捨てみたいなおまえの行動が気に食わないんだよ。」
「ポイ捨てなんかじゃない。自分に嘘をつくのはやめようとしただけだ!」
「もうやめてよ楓!練習しよう?」
「こんな状態の伊織とバンドなんか組んでいられるかよ。
自分勝手で、仲間や彼女のことも思いやれないやつなんか!」
「じゃあずっと恋人ゴッコ続けていたら良かったのかよ!」
楓は伊織に近づいて胸ぐらを掴んだ。
「なんだよ。」
「
「あんな女とかテメェが言うな!デタラメな噂まで流しやがって。あいつがどんだけ傷ついたり、有澤と入江に暴力振われたか...。」
「知るかよそんなもん。俺らのバンドめちゃくちゃにしやがって。」
伊織は楓を殴った。
楓は伊織を睨みながら口を拭う。
「伊織!楓!もうやめてよ。」
「伊織!一つ言っておくけど、雨宮は妹になったんだから、恋愛関係にはなれないんだからな?」
楓の一言に、洋一とさりなは耳を疑った。
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