第六話 すれ違うきずな

第51話

土曜日。



伊織はギターバックを持って一階まで降りてきた。



玲蘭が食器を洗う手を止めて、声をかけた。




「伊織。今日はバンドの練習なの?」



「おぅ、なんか対バン出演の依頼が来てるらしくて。」



「へぇ。すごいね。なんかプロみたいじゃない。」



「いや、そこまでじゃねぇよ。」



「気をつけてね。いってらっしゃい。」



「おう。そういえば、志穂は?」



「友達と水族館だって。朝から出かけたよ。」




「そっか、父さんと母さんも土曜出勤日だし、玲蘭、家で1人じゃんか。」



「いいの。この前の数学で少し難しかったとこがあるから、勉強したいし。」



「相変わらずまじめだね。」



「伊織みたいに地頭がいいわけじゃないもの。塾にも行っていないから、自分でやるしかないからたくさん時間かけてしまうの。」




「何言ってんだよ。じゃあ、行ってくる。」



「気をつけてね。」




玲蘭は少し元気のない様子の伊織を送り出した。

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