第48話

「い、伊織。」




「何してんだよ。雨宮に触るな!!!」





玲蘭はようやく事態を理解した。伊織が玲蘭から楓を引き離し、頬に拳をくらわせたのだ。





「お、お兄ちゃん、カッコつけちゃって。」




「何言ってるんだ。」




「隠しても無駄だよ伊織。もうわかってるんだからさ。おまえの親父、再婚したんだろ?雨宮の母親と。



一つ屋根の下で、やらしいこと沢山してるんだな。」




「おまえには関係ない。」




「関係なくねーよ。さりなを傷つけやがって。

ふざけるなよ。」




「よくよく考えたら、なんで俺がバンドのために我慢して、さりなと付き合わなきゃいけないねーんだよ。



だいたい、そんな交換条件で彼氏彼女ゴッコして、アイツは幸せになれたわけ?



もう、意味ないから辞めようと思うだけ。

こんなんでバンドもダメになるならそれまでだ。」




楓は、伊織のカッターシャツを掴んだ。




「てめー!黙って聞いてれば!」




伊織は楓から目線を逸らした。




そのとき、チャイムが鳴った。




「まぁ、いいさ。しばらくこの件は黙っててやるよ。



またな、雨宮。」




楓はニヤニヤしながら去っていった。




楓は玲蘭を抱きしめた。




「伊織.....。」




「大丈夫だったか。」




「うん。」





「アイツになんかされそうになったら言えよ。絶対俺が守るから。」






「うん.....。ありがとう。伊織。」






玲蘭は伊織の優しい香りに包まれながら、しばらく腕の中にいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る