第五話 2人のきょり

第41話

玲蘭はびしょ濡れで家に入った。



伊織は物音がしたから、リビングから玄関に来て、ズぶ濡れの玲蘭を見て驚く。




「玲蘭...。傘持ってなかったのか。」



「うん。知らなかった。今日雨降るだなんて。やだなー、ビショビショになっちゃった!」




伊織は玲蘭の足に怪我があることに気がついた。



「玲蘭、足、どうしたんだよ。」



「え?」




玲蘭は自分の足の怪我に伊織から言われて初めて気がついた。



それくらいザザぶりの雨の中、夢中で帰ってきたのだ。



「玲蘭、まさか、さりなに暴力振るわれたわけじゃねーよな?」



「違う。違うよ。逢沢さんは関係ない。」



「じゃあ、入江と有澤だろ。...あいつら!!」



「大丈夫だから!気にしないでよ。」




怒りに震えている伊織をなだめ、玲蘭は靴を脱いで、家に上がった。




「玲蘭!」




伊織は玲蘭を抱きしめた。





「ごめん.......!」




「伊織。」





「俺のせいで、こんな目にあって.......。」



「ううん。大丈夫。」




伊織は玲蘭にそのままキスをした。




舌を絡ませてくる大人のキス。




玲蘭は恥ずかしくなり、息も苦しくなって、伊織を突き飛ばした。




「やめてよ。」




玲蘭は息を整えて、伊織を見た。




「ごめん。」




「もう、辞めよう。こんなこと。倫理に反してる。」




「玲蘭.....。」




「私だって、好きな気持ちが止まらなくなりそうなんだもん。」




玲蘭は涙混じりの声で言った。




そんな玲蘭の涙で、伊織の中のなにかがキレた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る