第36話

その日の6限は全校集会だった。



生徒はダラダラと体育館に集まってくる。

いつもなら、皆会長の話を楽しみにしているところだが、この日は違った。




みんな好奇の目を玲蘭に向けるだろう。




奈々と似奈はそう危惧していた。




修也と智之もその空気感を感じて、声を震わせながら、マイクで司会として話始める。




「それでは、まず、副会長より、来学期の文化祭についての説明があります。」



奈々は壇上にあがり、来月の文化祭について、説明を始めた。



「副会長の福田奈々です。



本日は、秋開催の文化祭について、説明します。



午前中の第一部は合唱コンクールです。

現在音楽の授業で練習している課題曲を、クラス毎に披露してください。




午後の第二部は有志による発表です。本年度は5組、募集を募り、皆さんによる投票、生徒会と先生方による審査の上、出演する5組を決めたいと思います。



出演したい方は、生徒会室前の申込書を記載の上、生徒会役員までご提出ください。

期限は20日までとします。



夏休み前のホームルームで投票を行いますので、みなさん投票もご協力お願いします。」




奈々が説明を終わり、壇上から降りてきた。




「続きまして、生徒会長よりお話しです。」




奈々は玲蘭の顔を見て表情で頑張れ、と伝えた。




玲蘭も無言で頷いて、壇上に上がる。




玲蘭は生徒たちの目を見ずに、真っ直ぐ前を向いた。




「人の男に手を出す人間が生徒会長でいいんですかー?」




有澤が声を出した。




「ダメでしょ、解任かいにーん!」




入江も大声で叫ぶ。




「うるせーな、静かにしろ!」




伊織が立ち上がって叫んだ。




「解任!解任!」




2人が手を叩いて騒ぎ出すと、何人か手を叩きはじめた。




「やめろ、てめえら、ぶっ飛ばされテェのか。」




「おーっと、当事者の伊織くんが庇い始めました!」




楓が騒ぎ出した。





「静かにしてください。」





司会の修也が、マイクで注意をする。





「雨宮玲蘭!おまえなんか生徒会長辞めろ!」




「さりなのこと傷つけやがって、ぜってー許せねー。優等生ぶってんじゃねぇよ。」




野次を飛ばす2人。




玲蘭の目は潤む。




体育館はざわついた。

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