第35話

さらに次の休み時間、玲蘭は一人でトイレへ向かった。



すると中からさくらたちの声がする。




「ねぇ、どう思う?」



「玲蘭の話?朝比奈とキスしたのかな?」




「前々から玲蘭、朝比奈のことえらく庇っていたもんね。いい子ちゃんぶりっ子キャラの点数稼ぎかと思ってたけど、違ったんだね。」




よもぎは、そう言って鼻で笑う。





「あの子と一緒にいると先生ウケ良かったけど、もうダメね。」




「うん、下手すりゃ山飼先生に睨まれちゃうよね。私たちも。」




「これから、玲蘭のことはシカトね。朝比奈に関わったからには縁切らないと。」




さくらの一言に、玲蘭はショックを受けた。

親友だと思っていたのは自分だけだったと思い知り、すごく恥ずかしくなる。




玲蘭がトイレ前で震えていると、急に肩を掴まれた。





玲蘭が顔を上げると、肩を掴んだ人物が

トイレの入り口ドアがバン!と開けた。




さくらたちは驚いてドアのほうを見る。




玲蘭の前に、奈々と似奈が立ち塞がる。





「さっきから聞いてればなんなの?あんたたち、最低。」



「似奈。」



「煩いわね。生徒会役員が何の用?」



「いじめ撲滅、他人の心を傷つけるいやがらせをこの学校から追放しよう!は私たち生徒会のスローガンよ。」



「玲蘭を傷つけないで。」



奈々が言うと、さくらは高笑いした。



「良かったね。まだ、味方がいてくれて。

 でも、私は、山飼に目をつけられそうな生徒の友人はいらないの。R女学院に入るためには内申点重要だから。ごめんね。」




さくらたちは群れてトイレから出て行った。



玲蘭の頬を涙がつたった。




「玲蘭......。」



奈々と似奈は玲蘭の頭を撫でて言った。



「お昼ごはん、今日から生徒会室で食べよう?」



「え、でも。」



「教室で食べても、楽しくないでしょ。あんな奴らと一緒に食べるより、私たちと食べた方が絶対楽しいよ。」



「ありがとう、似奈。」




今まで、玲蘭は生徒会役員として三期にわたって、似奈と奈々とやってきた。



2人はしっかりもので、正義感が強くて、本当にこの仕事が好きでやっていて、お母さんに気を遣っていい子ちゃんしていようなんて考えが恥ずかしくなるくらいだった。



特に奈々は、フィギュアスケートもやっていて、練習も忙しいのに、生徒会もやるという、フルパワー少女で、姉御肌なので、玲蘭も頼りにしていた。




みんなから好奇な視線に晒されて、親友だと思っていた友人に裏切られた今、


2人の優しさに、涙が止まらなくなる玲蘭だった。

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