第34話

1時間目と2時間目の間の休み時間、玲蘭を有澤と入江がまた取り囲む。



「おい、雨宮、なんとか言えよ。」


「何、人の男に手ェ出してやがんだよ。」



そこに遅れて登校してきた伊織が、玲蘭の異変に気づく。



「黙ってないでなんとか言えよ。」



「やめろよ。」



伊織が有澤の肩を掴んだ。



「会長が何したっつーんだよ。」



「は?てめぇ、よくいけしゃーしゃーと。」



「昨日、生徒会室でこいつとキスしてたんだろ?浮気してんじゃねーよ!」




伊織は少し驚いた顔をするが、すぐに表情を引き締める。




「もし、してたとしても、てめぇらには関係ない話しだろうが。雨宮に絡むな。」




すると、さりなが机をバンと音を立てて、立ち上がる。




「なんなの。それ。

 私の気持ちはどうなるのよ、伊織。」




伊織はため息をついた。




「めんどくせぇこと、言うなよ。」




「伊織。この際だからハッキリ言わせてもらうけど。前から聞きたかったの。



私と付き合ってて、楽しくないと思ってるでしょ?付き合ってるのは、私をボーカルとして使いためだけ?」




「そう、思うならそうなんじゃない?」





伊織のハッキリと言わないまでも、遠回しにそうなんだと思わせる言い方に、さりなはショックを受ける。




「酷い!さりなを泣かすなよ。」




有澤が叫ぶと、伊織はうるせぇ、と叫んだ。





「交換条件にしたのはお前だろ。」





さりなは、泣いて教室を飛び出して行った。

有澤と入江がそれを追いかけていって、チャイムが鳴る。




伊織は乱暴に席に座った。

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