第13話

翌日玲蘭が登校すると、広本ひろもとよもぎ、西崎もみじ、北原ふたばと共に、さくらが話しかけてきた。



「おはよー!玲蘭!」


「おはよう。みんな。」


「今日、一時間目のホームルームは席替えだね。」


「あーそうだった。」


「間違ってもあの3人、いや4人の前後左右にはなりたくないものよね。」



さくらがまた伊織や楓を見ながら話している。



玲蘭は苦笑いする。




「でも確率でいうと、かなりの確率よね。35人中4人いると。」




もみじが言うと、その場にいる皆んなで頷く。

玲蘭だけは苦笑いを続けている。



「猿林くんはまだマシなんだけどね。授業中は寝てるだけだし。逢沢さんなんて有澤さんや入江さんと騒いだりするし。マジ煩いよ。」


「よもぎ今、逢沢さんたちの隣だもんね。うちも斜め前の加賀美くんはすぐ先生に反抗するし、やっと離れられるかも、と思ったら肩の荷が降りるよ。」


「でも4人のうち誰かとは隣になるよね。本当この時期の席替えは重要なのに絶望しかない。」




グループの子たちが、みんなこんな調子だから、伊織とは家族になってしまうこと、玲蘭は言えるはずなかった。



どう切り出すか、悩ましい。



一方で伊織は自分の席で雑誌を読み耽っていた。



「いーおり!おはよー!」



さりなが抱きついてきた。

伊織は嫌な顔をして、振り払う。



「人前でやめろって。」



さりなは伊織の態度に顔をしかめる。



「まぁまぁ、さりな。やめとけよ、伊織は他人の前でベタベタするタイプじゃないだろ?」



伊織の前の席の猿林洋一さるばやしよういちがフォローする。

すると楓もやってきた。



「いいなー俺も彼女欲しーわ。できたら雨宮さんみたいな。」



「おまえが全校生徒の憧れ、雨宮と付き合えるなんて確率0に限りなくちけーわ!」



「洋!ひでーじゃん。」


「事実ですが、何か。」


「とりあえず今日席替えじゃん?雨宮さんと隣になりたいなー。」


「あっちはなりたくないと思うぜ?」


「なんだとー!」



洋一と楓が騒ぐ中、さりなは伊織を見つめていた。



心の中の声が溢れそうだった。




(人のいないとこでも、しないくせに.......。)

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