第3話

あれは入学して2ヶ月。中間テストがあったころだった。




『雨宮玲蘭さん!』




帰りに体育館前を通ると、誰かに話しかけられた。




声のする方を見ると、体操服姿の細身の男の子が立っていた。




玲蘭は誰か分からず、困り顔をした。




『あの。私の名前...。』



『あぁ。北小の奴らに聞いた。君、中間テスト、学年で1番だったんだって?』



玲蘭はいきなりプライバシーについて話しかけてくる男の子に、不審感を抱く。



『俺、二位だったんだ!小学校ではいつも1番だったのに、悔しくてさ。どんな子かなって。気になってさ。』



『へぇ。あなた、頭いいのね。』




『まぁね!俺、朝比奈伊織。5組。また話そうぜ!』




そういうと伊織はバスケ部の練習に戻っていった。




玲蘭は伊織の爽やかさに、産まれて初めての気持ちを抱いた。





心がざわついて、たまらない。





恋を、識った。中学一年生の春の出来事だった。

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