第13話
それは世間一般で言うところのキスというものだと思考の隅の冷静な自分は理解しているのだけど、どうして翼がそのような行動に至ったのだろうか
その理由がさっぱりわからない
数秒触れた唇は音もなく静かに離れ、それでも顔の距離は近いままお互いの視線が交わった
近くで見れば見るほどきめ細かい肌の上に配置良く置かれている翼の澄んだ黒い瞳には、何が起こったかわからないと言わんばかりに呆けた表情の私が映っている
脳の処理が追い付かない状況への焦りが羞恥を上回り、まずは少しでも距離を取りたい
と思ってもいつの間にか私の腰に回された腕と後頭部を支える翼の手によってしっかりと固定された身体は思い通りに身動きを取れず、逃げることは許されない
「…んっ、っふぅ……」
もう一度、唇が塞がれた
一度目より少し長めに触れて、また離れる
なんで、どうして、考えようとしても思考はぐちゃぐちゃ
実は酔った末の夢だったのかも…なんて都合よく現実逃避してみたくても、
刺すように冷たい外気と真逆に私の唇に残る熱と、触れ合った感触の名残りが紛れもなく今この場で起きた事実であったことを主張していた
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