第11話

「うわ、さすがに一月の夜は寒いなー。熱気の集まる空間で数時間過ごしてたから尚更か。」



くるは寒くない?なんて私を横目で問いかける翼の恰好は室内と同じシャツの上にカーディガンだけ



一方の私は、コートを羽織るまではしなかったものの、鞄に入れていた大判のストールを肩にかけている

どっちもどっちで真冬の外に向いている格好とは言えないが、ストールに身を包んでいる分私の方がいくらかマシだろう



しかし身体を突き刺すような寒さはストール程度では防ぎきれないのもまた事実なので、翼からの問いかけにはそれなりに、と曖昧に返答しておいた



翼の酔い覚ましという名目で外に出てきたけれど、この寒さのおかげでさっきまでの独特の昂揚感なんかはいくらか落ち着いてきたように感じる

翼を酔っ払い扱いしていた私も自分で思っていたよりは酔っていたらしい



先程の問いかけに答えたきり翼との間に交わす言葉はなく、静寂にはお互いの呼吸するわずかな響きと吐息が白く形を作るだけ





「ねぇ、来実」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る