第9話

「……る?ねぇ、くる?俺の声聞こえてる?」



突如思考に入り込んできた声にハッとして意識を戻してみたら、怪訝な顔をして私の顔を覗き込む翼の姿が目に入る

どうやら私が高校時代の思い出に耽っている間にみんなは翼を解放していたらしい



「あぁ、うん。ごめんね。ちょっと昔のこと思い出してたの。」



「昔のこと?高校の?」

意外そうな顔で聞き返してくる



「うん。私の高校時代ってほとんど翼といたなぁって思い返してた。」

その言葉に少し目線を上にずらして思い返すような仕草をしたが、すぐに元に戻った



「んー…そうだっけか?まぁ言われてみれば俺、何するにもくると一緒だったかもなー。」



クラスも部活も一緒だったから毎日顔合わせてたしー…なんて言いながら私の肩に凭れて頭を預けてくる翼



「っ!?……なに、酔っぱらってるの?」

思わず声をあげそうになったものの、相手は翼だと思い直し、なるだけ冷静に言葉を紡ぐ



「んんー…ん…さすがにちょっと飛ばしすぎた、かも?一気に回ってきた気がする~。」



自分のことの割に適当な表現をする翼がお酒に弱いとは聞いたことがないし、恐らく強い方なんだとは思う

けれど、それなりの量のジョッキを空けているみたいだし酔いが回っても仕方ないことだろう

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