第8話

無条件に隣に立っていたといっても、私と翼が彼氏彼女なんて世間一般の安っぽい関係に納まったことはただの一度もない

それどころか、お互いに恋人を作っていた期間が高校3年間の半分以上を占めていた記憶だってある



示し合わせたわけじゃないけど、唯一暗黙のルールとして恋人を作るときは決まって他校生か学外の人に限定していたくらいで



それでも、私たちは恋人や友人のために費やす時間に引けを取らないくらいの時間を共有していたし、この場に集まってるクラスメイト達もそれをよく知っている

だからこそみんなの人気者で、今となってはめったに会えない存在の翼が輪の中心ではなく私の隣でお酒を煽っていても無理に引っ張りにくることはないのだ



当時の私と翼を言い表す関係の名前を並べるとクラスメイト、友達、部活の選手とマネージャー、学級委員長と副委員長…色々あるけれど、結局のところ肩書きなんてものはどうでもよくて



私の隣には翼がいて、翼の隣には私がいる



それが一番シンプルで正しい定義だったのだと、今なら思う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る