第6話

「お前、今更連絡先知ったって必要ないとか思ったろ。でももう登録したんだからな、今年からはまたちゃんと俺の誕生日祝えよ。」



「勝手に人の心読まないでもらえる?っていうかなんで私の誕生日までしっかり覚えてるのよ。しかもまた、ってねぇ…翼の誕生日を祝っていたのだって何年前の話してるんだか。」



高校時代からよく言えば私の感情を察するのが上手く、悪く言えばどんな気持ちも見抜いてしまう翼は、私にとって楽で心地良い存在でもあり、同時に隠し事が出来ない面倒で厄介な存在でもある



今だって、5年という時間の流れを感じさせない距離感で接してくる翼に対して若干の戸惑いがある私の気持ちに気づいていながらもその態度を変えようとはしていない



代わりに、隣同士に座っている私と翼の間に人一人分の、昔なら空けることもなかっただろう空間があるのが翼なりの私への配慮だということもわかっているから憎めない



決して言葉にはしないその優しさが心地よくて、それが私が翼に対して特別心を開くようになったきっかけでもあることは絶対に翼には言ってあげないけれど



仕方ないからその優しさに免じて、一応今年の誕生日には一言だけメッセージを送ろうと思った

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