第14話 もう一歩勇気を
「うん、知ってる」
「私も薄々感じてたよ……?」
女子二人を前に、わたしは「え」と口を開く。
そんなにわたしってわかりやすいの……?
土日、ぐるぐると菅野さんのことばっかり考えてしまった。
わたしの想いは迷惑だろうけど、伝えたい気持ち。
迷惑であるならこの想いは封印すべきだ、という気持ち。
悩んで悩んで、でもやっぱり答えは出なかった。
その代わりに、七菜ちゃんと真希ちゃんには話そうと思って、お昼休みにこっそりと伝えたのだ。
でもまさか、即答で「知ってる」なんて言われるなんて思ってなかった。
そんなにわかりやすいなら、もしかして菅野さんにも……!?
急に顔が熱くなって、わたしは下を向く。
バクバクと落ち着かない心臓はいつまでも鳴りやまない。
「ど、どうしよう。菅野さんにも伝わってるかな……っ」
本気で焦って、わたしは二人に思わずたずねる。
二人は一瞬固まって、その後同時に口を開いた。
「大丈夫。アイツ鈍感だから」
「大丈夫だよ。菅野くん鈍感だし」
二人が言うのならば間違いはないのだろう。
ホッと心から安堵し、わたしはまだ何か言いたそうな二人を見る。
「ね、伝えるだけ伝えてみればいいじゃん。想いをなかったことにするなんて、絶対ダメだよ」
うん、わたしだって諦めたくない。
諦められないんじゃない。
好きだから。もっと彼のことが知りたいから。
この想いを、いつか伝えたい。
「七菜ちゃんの言う通り。今日にでも告白しちゃいなよ」
「っ!?」
さらりと言ってのけた真希ちゃんに耳を疑う。
「こ、ここ、こっここ……こ、告白っ⁉」
「あはは。ニワトリじゃないんだから」
「ひどいっ」
恥ずかしさやらなんやらでさらに顔が赤くなる。
わたしは横に置いてあった水筒を持って口を潤す。
内側からさーっと冷めていき、少し心臓の動きが穏やかになる。
わたしはふふふと笑う二人を見て、無理だよ、とつぶやく。
「無理じゃないよ。自分の未来は自分で掴めって言われたんじゃないの? たまにはいいじゃん」
「ど、うして。それを……」
確かに、言われた。
――『自分の未来は自分で掴め』
「この言葉ね、アイツの口癖みたいになってるの。あたしも何回言われたかわかんないや」
「そうなんだ……」
自分の未来は、自分で。
決して良い未来でなくても、それでも。
もう一歩。勇気を踏み出そう。
「ありがとう。考えてみるね」
「うん、そうしなよ!」
後悔しないように。後悔は残り続けるんだ。絶対に消えない。
わたしはぐっとこぶしを握って決意する。
――わたしは今日、告白する。
―――――
運がいいのか偶然なのか、菅野さんとすれ違うことが多かった。
一回目は何も言えずに、二回目のチャンスが来る。
しかし、菅野さんの周りに友達らしき人がいて言えなかった。
三回目。今思えば、これがラストチャンスだった。
移動教室のとき、たまたますれ違った。
誰も周りにいないことを確認して、わたしは少しだけ彼のワイシャツを引っ張る。背伸びして、背の高い彼の耳に口を近づける。
「今日の放課後、旧校舎の空き教室に来てくれますかっ」
緊張しているせいか、思わず速くなってしまう。
彼は驚いたような顔を浮かべると、顔を縦に振ってくれた。
――あと一歩、もう一歩。足を踏み出すんだ。
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